おいしい食事で、災害発生後3日間を自宅で乗り切る!
2024.12.13
10月19日(土)、10月20日(日)に本学の学園祭である第71回目白祭が開催され、その中で食物学科有志が「災害発生後3日間を自宅で乗り切ろう」をテーマに、展示と食事提供を行いました。有志メンバーには食物学科食物学専攻および管理栄養士専攻の3年生が専攻を越えて参加しています。
「災害を自宅で乗り切ろう」災害への備えを考える展示
災害発生後にライフラインが復旧するまでの日数を3日間と仮定して、被災地で不足しやすい「水?食料?栄養」に着目し、必要な備蓄量や「ポリ袋調理」などについて展示で紹介しました。ポリ袋調理とは、食材や調味料をポリ袋に入れて、混ぜたり湯煎したりする調理方法であり、カセットコンロと少量の水があれば、ガスや電気が通じていなくても調理ができるという特徴があります。
会場では調査した資料を展示しただけでなく、ポリ袋調理に関する実験を行って結果を表にまとめたり、調理工程を動画で解説したりしました。ポリ袋調理のレシピとして、カレーやトマトリゾット、さばチャーハンなどが紹介され、来場者は「家に帰って作ってみたい」と口々に話していました。
「災害を食べて学ぼう」ポリ袋調理での食事提供
今回は災害発生後3日間に焦点を当てて、メニューを考案しました。そのためガスや電気が止まって冷蔵庫が使えず、水の使用量にも制限がある状況を想定しており、常温保存が可能な食材のみを使用してポリ袋調理を行いました。
目白祭の2日間で提供したのは合計300食。それら全ての食材を1食ずつ専用のポリ袋に詰めてシーリング(密封)して湯煎し、提供時には1袋ずつ開封して盛り付けました。
「災害時に役立つメニューを複数紹介したい」「食事を楽しんでいただきたい」そうした思いで、今回はメニューを2種類用意しました。来場者は2種類のメニューから選んだ上で、デザートの蒸しパンもチョコ味と野菜ジュース味から好みに合わせて選択。食事の会場では「ポリ袋調理だとは、言われないと分からないくらい美味しい」「災害時に温かい食事ができると安心すると思う」などの声が聞こえていました。
目白祭にむけて企画?運営した学生の声
今年度は食物学専攻3年生22名、管理栄養士専攻3年生28名が有志メンバーとして企画に参加しました。その有志メンバーから、展示のリーダーを務めた食物学専攻3年の松前明衣里(まつまえあいり)さん、食事提供のリーダーを務めた管理栄養士専攻3年の仁田陽菜(にったはるな)さんに、今回の企画に向けた思いや学びについて伺いました。
松前:本学には自主性を重んじる校風があり、食物学科にもさまざまな委員会活動があるのですが、「4年間の中で1度は委員会活動に参加するように」という先生からの呼びかけを聞いて、参加する委員会を探していました。今回の目白祭の企画も委員会活動の1つ。1番楽しそうだと感じてこの企画に参加しました。
仁田:同じ食物学科に所属していても、食物学専攻と管理栄養士専攻では、あまり関わる場面は多くありません。私は普段、接点のない人と関われることが魅力だと思って参加を決めました。
——なぜ「災害発生後3日間を自宅で乗り切ろう」をテーマにしたのですか?
松前:テーマを決めたのは、2024年1月でした。当時、1月1日(月)に発生した令和6年能登半島地震を受けて、災害時に何かできないかと考えたのが始まりです。食物学専攻の授業で、鈴木礼子(すずきれいこ)准教授から学んだポリ袋調理を生かそうというアイデアが生まれました。
仁田:管理栄養士専攻では給食経営管理実習という授業で、松月弘恵(まつづきひろえ)教授から災害時の給食経営として備蓄や缶詰を使った献立などを学んでいたので、この企画にはそれらの知識も生かしています。災害時でガスも電気も止まり、使用できる水の量が限られていたとしても、カセットコンロと備蓄食品だけでここまで普段と同じ食事が楽しめるということを伝えたいという思いを持って取り組みました。
——展示と食事提供をする上で、大変だったことは何ですか?
松前:展示の中で紹介した2つの実験「ポリ袋調理に最も適しているのはアイラップ、ジップロック、湯煎調理袋のどれか」「ガスや水の使用量がどのくらい必要か」が大変でした。1回目に実験した後、レポートにまとめながら「前提条件が揃っておらず、結果が比較できない」ことに気づきました。そこから全ての実験をやり直し、正確な結果を展示することができました。
仁田:昨年の食事提供では1種類のメニューを各日100食ずつ提供したそうですが、今年は2種類のメニューを各日150食ずつと、提供する食事の種類も数も増やしたことが大変でした。臨地実習(学外の給食施設における実習)で経験したことを生かして何とか乗り切ることができました。昨年は当日券が売り切れてしまって喫食できない方もいたのですが、今年は多くの方に楽しんでいただけたと感じています。
——本学食物学科に入学した理由、そして入学してみて感じたことを教えてください
松前:実は私は、中学生のころは管理栄養士になりたいと思っていました。しかし「食の楽しさ」を中心に学びたいという思いから食品開発への興味が高まって、管理栄養士専攻ではなく食物学専攻を選んで入学しました。入学して感じたのは「想像した通りの学びがある」ということ。普段、自宅で料理をしているときにも、「あ、これ授業で学んだことだ」と発見があって、嬉しさや楽しさを感じています。
仁田:私も小学校5年生ごろから管理栄養士になりたいと思い続けていました。きっかけは高血圧の方においしい食事を届けるという食卓便のテレビCM。食べたくても食べられない人に、いかに美味しく食事してもらうかを考える管理栄養士の仕事に魅力を感じています。入学後は、想像以上に学ぶ内容が幅広いことに驚きました。栄養や身体のことだけでなく、調理実習や食品衛生、食の流通管理から経営的な考え方まで。勉強はもちろん大変ですが、座学だけでなくそれに対応する実験の授業があるので、理解を深められるカリキュラムだと感じています。
——受験生にむけてメッセージをお願いします!
松前:食に興味がある方、食品開発を目指す方の中には、農学部や理学部と迷う方もいると思いますが、私は「食」に焦点を当てて学べる食物学専攻(※)を選んで良かったと思っています。私は食物学専攻で、食について多角的に学ぶことで新たな視点を得たり、将来の考え方が変わったりしました。皆さんもそれぞれ興味があることを大切にして、それに対する学びを深めることで、自分なりの考え方を広げていってほしいです。
仁田:管理栄養士専攻(※)に入ると食に関して幅広く学ぶので、「食」が好きな人にとっては、必ず何か1つはより深く学びたいと思うことが見つかるのではないでしょうか。また食物学科の学生、先生は食べることが好きな人が多く、女子大学ならではの距離感の近さも魅力だと思っています。
※日本女子大学は、2025年4月に現在の家政学部食物学科食物学専攻/管理栄養士専攻を基とした、食科学部食科学科/栄養学科を開設予定です。