株式会社クボタ筑波工場にて、 学生開発のメニュー「つくメシ」を提供し、健康づくりに貢献!
2024.03.28
日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻では、トラクタおよび産業エンジンで世界トップクラスの生産量を誇る株式会社クボタ筑波工場(以下、クボタ筑波工場)と共に、「楽しみながらできる健康づくり」をテーマにした取り組みを2022年度より行ってきました。
初年度は、クボタ筑波工場の従業員向け食堂において学生考案の昼食メニューを5日間提供する「日本女子大Week」を2回開催したほか、アンケート調査、アプリを通した情報発信などを実施。2年目である今年度は、クボタ筑波工場の従業員3,670人への「昼食と健康に関する調査」、その結果に基づいた「メニュー開発」と3回の昼食提供、動画やオリジナル曲、レシピ集を使った健康増進のための「情報提供」などさらに活動を発展させました。学生考案メニューは、クボタ筑波工場の方々に親しみを持っていただけるよう「つくメシ」と名付けています。
このプロジェクトはクボタ筑波工場の皆さまの多大なご協力と、本学の松月弘恵(まつづきひろえ)教授、助手の水野智春(みずのちはる)先生の指導のもと、家政学部食物学科管理栄養士専攻の食経営管理学中国足彩网室(松月教授)に所属する4年生8名が推進してきました。プロジェクトの立ち上げから2年間に渡って活動を続け、その成果を3チームに分かれてそれぞれ卒業論文にまとめた、そんな8名がつくり上げた「つくメシ」をご紹介します。
健康的な食事「つくメシ」
15セットのメニューの提案
クボタ筑波工場は2022年6月に「スマートミール」認証制度にて最高評価の三つ星を獲得しました。スマートミールは「健康づくりに役立つ、栄養バランスのとれた食事」のことで、1回の食事あたりのエネルギー、野菜量、食塩相当量などが定められています。クボタ筑波工場は「スマートミール」の基準を満たした食事を、継続的に健康的な空間で提供している事業所であると認められています。
「つくメシ」のプロジェクトでは、「スマートミール」の基準に則って2年間で主菜1品?副菜2品からなる20セットのメニューを開発し、15セットをクボタ筑波工場の社員食堂で提供しました。「メニュー開発」を主に担当したのは、岩佐さん、野村さん、山上さん、上原さん、松尾さん。提供期間は「日本女子大Week」と名付けた5日間で、2年間の中で5回(計25日間)開催してきました。第1弾、第3弾、第5弾はそれぞれ新しく開発した「つくメシ」を提供し、第2弾?第4弾は、それぞれ前回の「日本女子大Week」で残念ながら召し上がる事の出来なかった従業員の方々の要望により、前回と同じのメニューを提供したものです。第1弾では「日本女子大Weekの認知度が低かったので、声かけを頑張っても完売できないメニューがあった」と山上さんは振り返ります。しかし第3弾、第5弾と回を重ねる度に食事提供数を増やし、それらはすぐに売り切れる人気ぶりとなりました。完売の背景として「前回の売り上げデータを分析して、味付け?調理方法?食材の3つを軸に試行錯誤でメニューを開発していた」と岩佐さんは語りました。
また、クボタ筑波工場の方々からレシピを知りたいという声が上がり、「つくメシレシピ集2023年度」を作成しました。これまで大量調理で提供してきたメニューを家庭で調理できるレシピに調理方法をアレンジしており、自宅でも楽しく健康づくりをしていただけるよう、レシピ集の配布を配布しました。
計30本制作した動画で
健康増進のために情報提供
本プロジェクトでは健康的な食事を提供するだけではなく、健康に関する「情報提供」も行いました。この取り組みの背景には2024年度からスタートする「健康日本21(第三次)」にて求められている「自然に健康になれる環境づくり」を実現するために、食品(食材、料理及び食事)だけではなく、情報へのアクセスも求められているということがあります。
「情報提供」を担当したのは、今村さん、杉永さん、西村さんで、栄養バランスの考え方や 1 日にとりたい野菜量などの健康的な食事に関する情報、次の「日本女子大Week」で提供するメニューなどをまとめた30秒程度のオリジナル音声動画を、2年間で計30本作成しました。動画はクボタ筑波工場の正規従業員向けアプリで配信したことに加えて、工場内のデジタルサイネージで放映したり、チラシやポスターで中国足彩网したり、動画QRコードを付けたカードを従業員の方々へ手渡したりと多様に展開。今村さんは「動画や画像編集をしたアルバイト経験を生かして、工夫をこらして情報を発信した」と言います。杉永さんは「実際に工場に足を運んで食堂の環境を知ることで、従業員の方が視聴しやすい動画形式を検討できた」と語りました。
2年間を通して見えてきた課題は「日本女子大Week」の存在を知っている人でも、なかなかアプリやデジタルサイネージ動画の存在までは知ってもらえていなかったこと。これは「つくメシ」を購入した317名に回答いただいたアンケート結果から判明しました。西村さんは、「社内アプリを見ることができない正規従業員以外の方にも情報提供するために、今後はさらに情報発信の方法を増やす工夫が必要だと思う」と話しています。
クボタ筑波工場の従業員3,670名対象
大規模アンケート調査から見えたもの
2023年4月、クボタ筑波工場の従業員3,670名を対象に、「みんなの昼食と健康に関する調査2023年度」としてアンケートを配布し、87.4%である3,209名にご回答いただきました。アンケート入力は全員で行いましたが、解析を担当したのは、上原さんと松尾さんです。調査内容は「回答者属性、朝食喫食の頻度と社員食堂の利用、昼食で使用できる上限金額、社員食堂における選択と健康意識、つくメシの選択、ヘルスリテラシー」の6項目。さまざまな雇用形態の従業員が混在しているクボタ筑波工場において、食堂利用の特性と健康な食事の購入意識を明らかにすることを目的に実施しました。
その結果について、上原さんは「男女の違いだけでなく、雇用形態(正規従業員または派遣社員)の違いによって、健康への関心度が想定以上に大きく異なっていた」と語りました。調査結果はデータ分析をした上でメニュー開発時に大いに役立てたそう。しかし、分析をもとに自信を持って開発したメニューが、思った反応を得られなかったこともあり、松尾さんは「データの分析に加えて、食事提供する相手の生の声もお聞きしながら、相手に合わせたメニューを考えることが重要だと感じた」と話していました。
【学生インタビュー】
2年間の「つくメシ」を振り返って
卒業式の2日前である2023年3月18日(月)、「つくメシ」プロジェクトを推進してきた4年生の8名の送別会が行われました。主催したのは松月中国足彩网室の3年生。「日本女子大Week第6弾」で提供予定であり、自分たちが中心となって開発した初めての「つくメシ」を並べて先輩の門出を祝いました。
その送別会のすぐあと、3年生に引き継いで卒業していく4年生に、改めて「つくメシ」で学んだことや本学への思いを伺いました。
—「つくメシ」に携わろうと思った理由を教えてください。
杉永さん:3年生前期の必修授業「給食経営管理実習」の冒頭で、クボタ筑波工場との事業がこれから始まることを知りました。授業内で開発したメニューを土台に、「つくメシ」メニューを開発したのが第1弾の「日本女子大Week」。私はとにかく「給食経営管理実習」が楽しくて。実際に3,500人の社員を抱える企業で食事を提案できることが、実践的だと感じてそのまま「つくメシ」プロジェクトに携われる松月中国足彩网室を選びました。
岩佐さん:私は将来メニュー開発に携わりたいと考えていて、コロナ禍の実習授業で頑張って開発したメニューを最後まで見届けたいという思いもあり、プロジェクト参加を決めました。卒業後は食品メーカーに内定をいただいており総合職で働く予定なので、「つくメシ」での経験がそのまま生きると感じています。
—最も大きい困難そして学びは何でしたか。
上原さん:私はクボタ筑波工場の方々のニーズや、食事プレートの彩りに配慮しつつ、「スマートミール」の基準内でメニュー開発を行うことが難しいと感じました。満足いただけるしっかりした味付けにしつつも食塩相当量は抑えるにはどうしたら良いか、副菜のみを変更したときにプレート全体の栄養バランスをどう担保するかなど、健康なメニューを開発するからには、工夫を重ねる必要があると学びました。
山上さん:「どんなメニューが売れるんだろう。美味しいと思ってもらえるんだろう」と考えたときに、売り上げデータを分析する力を磨きました。また試行錯誤を重ねる中で、PDCAサイクルを回すことの大切さを先生から教えていただいて、スピード感を持って取り組む行動力が身についたと思います。
西村さん:食事提供する相手を知り、求められていることに応える難しさと大切さを学びました。私は食品メーカーから内定をいただいており、4月からマーケティングや企画を行うことになっています。「自分が良いと思っても相手のニーズに合っていなければ価値が生まれない」ということを実践の中で学べたので、人に寄り添う提案ができるよう就職先で頑張っていきたいと考えています。
—プロジェクトを引き継ぐ3年生への思いを聞かせてください。
山上さん:料理のレパートリーを考えるのが大変だと思うけれど、今日の送別会でのメニューを見て「斬新なアイデアを持ったメンバーだな」と感じたので、その強みを生かしてクボタ筑波工場の方々のお腹を満たしていってほしいなと思います。
松尾さん:今日の送別会で、3年生たちが口をそろえて「先輩たちの思いをちゃんと引き継いで、レベルを下げないようにしたい」と言ってくれていて。そういった気持ちを持ってくれていることがとても嬉しかったです。さらに次の後輩にも思いを引き継いでもらえるよう、今後頑張ってほしいと思っています。
—最後に、4年間学んできた日本女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻が、どのような学科、専攻だったか教えてください。
上原さん:日本女子大学の食物学科は、実験や実習といった実践的な学びの場がとても充実していることが最大の特徴だと思っています。給食経営管理実習で考案したメニューを、学内で100食提供したり、臨地実習では企業の食堂だけではなく、学校や保育園、セントラルキッチン、病院、保健所といった幅広い実習先へ行くことができたり。実践の場があるのは、私にとって大きいことでした。また、志高い仲間がとても多いなとも思っています。私1人では絶対できなかった事も多く、良い仲間と充実した大学生活を送れる環境がここにはあると思います。
杉永さん:日本女子大学はマンモス校ではなく、管理栄養士専攻での同級生は50人程度。少人数制だから先生方も顔を全員覚えてくれて、近い距離間で丁寧に教えてもらえるのが、日本女子大学の管理栄養士専攻の魅力かなと思います。
今村さん:「国家資格が取得できるから、とりあえず管理栄養士専攻に入っておこう」と思う人がいたら、しっかり考えを深めてから入ることをおすすめします。私は入学してから予想していた以上に高度で専門的な学びが必要だと知り、日々苦戦していました。しかし、授業や実習、「つくメシ」での情報発信など、この学科で苦戦した経験は確実に力になっていると感じます。食に興味があって、しっかり学んで力をつけたいという人にはぜひ挑戦してほしい学科です。
西村さん:給食経営管理実習で考案したメニューを学内では100食提供し、「つくメシ」では1,500人以上の方が利用する社員食堂で提供し、どんどん規模が大きくなっていって。勉強した内容が社会に繋がっていると感じられたのが、すごく実践的で楽しくて、自信にも繋がりました。就職活動でも自分が学んできたことを自信を持って話せたので、ここで学べば自信が持てるんじゃないかなと思っています。
【松月教授よりメッセージ】
このプロジェクトの最大のテーマは「健康な食事をいかにマネジメントするか」でした。「栄養」を振りかざしても届きにくいフィールドにおいて、学生たちは短期間で飛躍的に成長しました。それは学びの基礎の上に、高い課題発見能力と「いかに社会に認めていただけるか」を真摯に問い続け、スピード感をもって行動したことによるものでした。それはまさしく、本学の創立者成瀬仁蔵の教育理念である三綱領「信念徹底」「自発創生」「共同奉仕」の具現化であったと思います。
※日本女子大学は、2025年4月に現在の家政学部食物学科食物学専攻を基とした、食科学部栄養学科(仮称)を開設予定です。