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大型国際スポーツ大会における飲食サービスから、人と地球の健康を考える

2024.01.15

エームサービス株式会社取締役 紅林利弥氏による特別講義(家政学部食物学科管理栄養士専攻)

エームサービス株式会社の取締役による特別講義

2023年11月18日に、家政学部食物学科管理栄養士専攻の2年生がエームサービス株式会社(以下、エームサービス)の取締役による特別講義を受けました。エームサービスとは、大型国際スポーツ大会でのアスリートへの食事提供をはじめ幅広いフードサービス事業を展開する大手給食会社であり、取締役による大学での講義は初めての試みだったそうです。本講義は管理栄養士専攻2年生以外にも参加希望者が多く、当日は100名ほど、当日授業のため参加できなかった学生は、後日録画視聴で50名ほどが受講しました。

【卒業生講話】管理栄養士として幅広く活躍!
スポーツ栄養から水族館のメニュー開発まで

エームサービス取締役の紅林氏による特別講義の前に、本学卒業生である松尾夏海(まつおなつみ 2020年3月卒)さんにご講話いただきました。松尾さんは本学管理栄養士専攻で学んだ後に、エームサービスに就職。最初はアスリート向けの総合トレーニング施設等で食事提供を行い、現在は水族館内の事業所に配属となり、管理栄養士として活躍中です。
水族館の管理栄養士というのは、聞きなじみがない方も多いかもしれません。エームサービス内でも同事業所に管理栄養士が配属されたのは初めてだったそうです。松尾さんはフードコートやワゴン販売、お土産販売に関するメニュー考案を担当。アニメとのコラボメニューを開発したり、見た目の楽しさを重視してレモンを敷きつめたラーメンを開発したりするなど、そこでしか食べられないメニュー開発に注力しているそうです。
松尾さんの今後の展望は3つ。お客様を惹きつけるメニューを考案し続けること、水族館内で食育に関するワークショップを開催すること、そしてスポーツ栄養に関わり続けることです。現在、松尾さんは水族館で管理栄養士として勤務しながら、グループチャットを活用してアスリートの栄養サポートをしているそうです。配属先が変わっても、スポーツ栄養に関わりたいという在学中からの思いを持ち続けている松尾さんの働き方は、受講した学生に大きな刺激になったのではないでしょうか。

講話をする松尾さんと熱心に聞く学生/佐古中国足彩网室に所属していた松尾さんと佐古講師
写真左から 講話をする松尾さんと熱心に聞く学生/佐古中国足彩网室に所属していた松尾さん(左)と、久しぶりに再会した佐古講師(右)

【特別講義】取締役常務執行役員 紅林利弥氏

松尾さんの講話の後に、取締役常務執行役員の紅林氏による特別講義を行いました。2つのchapterに分けてお話いただいた内容を、それぞれご紹介します。

Chapter1大型国際スポーツ大会における飲食サービス

2021年の大型国際スポーツ大会にて、エームサービスがフードサービスの一部を統括?運営しました。大会を振り返ると、過去大会では多く発生していた食事に関するクレームの状況や、出場した選手から「これまでの大会で1番食事がおいしかった」などのSNS投稿から「成功」だったと考えています。
しかし、この成功までには多くの困難がありました。最も大きな困難は、コロナウイルスの流行です。当初の予定が急遽1年間延期したため、既に発注済だった食材や人材の確保、倉庫の手配など、解決すべき課題は次々と生じました。今大会のフードサービスが成功で終われたのは、多くの方の支えがあったからに他なりません。
そうした困難の中で、今回は新たな試みも多く行いました。たとえば世界中から来日する選手の多様性を尊重するため、ベジタリアンやビーガン、障碍者への対応に加えて、グルテンフリー、ハラールにも対応しました。ハラールについては専用の厨房を設けた上で、食材購入、輸送、調理の一連の流れを専門にアドバイスをいただきながら提供しました。
また、今回は「データ化」にも注力しています。本大会には長い歴史がありますが、過去大会における競技ごとの選手数や食事量などに関するデータが入手できないという課題がありました。そこで今回はデータを作成?活用して、選手が最高のパフォーマンスを発揮できるよう、24時間、700メニューを提供しました。今回得たデータから見えてきた意外な事実もあります。それは「トップアスリートはプラントベースフードを好み、肉類、とくに加工品は食べない」という傾向があることでした。

紅林氏による特別講義
紅林氏による特別講義
Chapter2 みなさんが世界を変える?
カーボンニュートラル時代における管理栄養士の役割

トップアスリートはなぜ肉類、とくに加工品を食べないのでしょうか。これは工業型畜産による一部の肉類に、抗生物質や肥育ホルモン剤が使われていることが理由だと思われます。公益法人日本アンチドーピング機構は、肉類に含まれる抗生物質や肥育ホルモン剤が、免疫力を低下させると警鐘を鳴らしています。
その他、工業型畜産が引き起こす問題は少なくありません。日本ではかつて「一汁三菜」の食文化でしたが、現在、肉の摂取量が増加するなど食の欧米化が進み、糖尿病や高血圧が増加してきています。世界に目を向けると、肥満人口は1975年から2016年の間に約3倍となっており、また牛が排出するメタンガス、飼料を輸入する際の二酸化炭素排出などは環境に悪影響を及ぼしています。
地球温暖化を実感しつつある現代において、人々の食生活が変われば世界が変わるのではないでしょうか。肉の摂取が全て悪いわけではありません。しかし、工業型畜産による肉ではなく、植物性たんぱく質に置き換えたならば、人々の健康も地球の健康も守ることができるかもしれません。本講義を受講した管理栄養士専攻の学生の皆さん、まず自身の生活様式を変えるところから始めてみませんか。

質問する学生/講話いただいた松尾さん、取締役紅林氏、特別講義を企画した松月教授
写真左から 講義後に紅林氏に直接質問するために列に並ぶ学生/講話いただいた卒業生松尾さん(左)、取締役紅林氏(右)、特別講義を企画した本学食物学科の松月教授(中央)

紅林氏による特別講義は、「皆さんは人類と地球を健康にできる」という激励で締めくくられました。質疑応答の時間には学生から途切れることなく質問があり、講義後も紅林氏に直接お話を伺うため列が生じていました。学生の感想を一部ご紹介します。

?世界中から多数の人々が集う大規模国際スポーツ大会には、多様性の尊重や環境への配慮が欠かせないのだと学びました。
?大型国際スポーツ大会の食事提供は、想像したこともありませんでした。しかし貴重なお話を伺う中で、私たちが今授業で学んでいるデータ収集や栄養?食材?メニュー管理などが基礎となっており、その基礎はグローバル規模に展開しても変わらないのだと知りました。

今回の特別講義は、学生にとって毎日の授業内容が、世界でどのように活用されているのか知り、管理栄養士の可能性について視野を広げる機会になったのではないでしょうか。本学の食物学科は、科学的観点から幅広く「食」を学び、グローバルな「食」の課題に立ち向かい、未来の社会に貢献する人材を育成しています。

※家政学部食物学科食物学専攻?管理栄養士専攻は、2025年4月より食科学部食科学科?栄養学科(仮称)を設置構想中です。