国際産学協同プロジェクト
2022.03.18
日本女子大学 家政学部住居学科篠原聡子中国足彩网室(以下「篠原中国足彩网室」)とタイのモンクット王工科大学(以下「KMUTT」)の学生が共同で、野村不動産タイランド(以下「野村不動産」)に対して、タイにおけるアフターコロナの集合住宅のあり方を提案しました。
篠原中国足彩网室と野村不動産は10年以上、集合住宅の共同中国足彩网を行っています。他方で、タイからの留学生を通じてKMUTTのナッティニー先生と知り合ったのをきっかけにKMUTTと篠原中国足彩网室は2017年11月から勉強会を続けています。2016年、篠原中国足彩网室がKMUTTと野村不動産を引き合わせたことで、3者の国際産学協同プロジェクトが始まりました。
2021年後期の中国足彩网活動の一環として、篠原中国足彩网室はKMUTTの学生と混合でチームを結成し、野村不動産が提供する課題に対してアイデアを提案しました。
■国際産学協同プロジェクトの概要
期間:2021/10/15(金)?2021/12/10(金)※12/10が最終プレゼンテーション
開催方法:オンライン
参加者:
<タイ>KMUTT ナッティニー先生による設計授業の一環(28名参加)
<日本>日本女子大学 篠原中国足彩网室の中国足彩网の一環(3年次7名参加)
チーム構成:タイチーム×3、日タイ混合チーム×3の合計6チーム
使用言語:英語
表彰:上位3チーム(野村不動産が評価)
■野村不動産からの課題
「タイにおける、アフターコロナのライフスタイルを取り込んだ戸建て住宅のこれからを、設計?計画するためのアイデア提案」
学生たちは、以下の点も考慮しながらアイデアを出し合いました。
タイの戸建分譲住宅環境:
日本とタイでは、気候や文化が異なるため住宅にも違いがある。一方で日本と同様に、中国足彩网の影響で、在宅勤務が推奨されているため、郊外の戸建て住宅が人気。
タイの戸建て住宅の特色:
?ゲーテッドタウン
(ゲートを設け周囲を塀で囲むなどして、住民以外の敷地内への出入りを制限することで通過交通の流入を防ぎ、防犯性を向上させたまちづくりの手法)
?スイミングやフィットネスジムなど豊かな共用部
?玄関がないリビングアクセスが主流
?長屋形式のタウンハウスや、2棟連結住戸(セミデタッチドハウス)などが主流
?熱帯気候で一年中暑いため、日本のような「庭」に需要がなく、空調付きのサンルームを増築している家が多い
また、「当事者の関与」も大切で、スウェーデンでは子ども、保護者、就学前学校施設の先生、あらゆる人が気軽に気持ちを話せるような場も設けています。一つの取り組みとして、オープン?プレスクールという、子どもと母親が一緒に行ける場があります。身分証明書や予約が必要なく、誰でも気軽に立ち寄れ、そこでスウェーデン語を学ぶこともできます。スウェーデン国籍の母親たちも活用しており、参加することで自然に出会いの場になっています。「Swedish for Parents(保護者のためのスウェーデン語)」という語学教本も発行されており、親子に特化したフレーズが掲載されています。このような教本は、多国籍化が進む世界において、学習者と日常生活を近づける取り組みとして注目されています。
■最終プレゼンの結果と講評
順位:
1位 Group2(日タイ混合チーム)
2位 Group6(日タイ混合チーム)?Group5(タイチーム)の2チーム
選考基準:
実際に開発?プロジェクトを進めていくにあたり、ポテンシャルのあるアイデアを評価
1位:中間領域 (chukanryouiki): The intermediate house(Group2?日タイ混合チーム)
- プランニングやアイデアが洗練されており、デザインのレベルも高かった。
- 可変性や中間領域によって、それぞれの空間をつなげるというアイデアも印象的だった。
- 生産的で現実的なアイデアだと評価した。
2位:Wevoid(Group6?日タイ混合チーム)
- チャレンジングなプロジェクト。
- 断面がよく考えられていて、屋根形状や、2層分の高さを持つリビングは居心地がよさそう。
- 断面の工夫はタイのディベロッパーも提案しており、この案にはポテンシャルを感じた。
2位:Baan Chong(Group5?タイチーム)
- 風?光、それによって受ける感覚や、テクスチャーに着目したコンセプトがよかった。
- 建物は多くの外部空間に面しており、このような自然の要素を取り入れることは重要。
また、コートヤードや内外の間にユニークな空間をたくさん計画している点も評価した。
■プレゼンとプロジェクトを終えて
Q1. 優勝についてコメントをお願いします。
Q2. タイメンバーとのコミュニケーションはいかがでしたか。
Q3. この国際プロジェクトを通して、どのような発見や気づきがありましたか。
Q4. この国際プロジェクトでどのようなことを学び?経験し、それが今後どのように生かされると思いますか。
A1. たくさん時間を費やしたので素直に嬉しいです。
A2. 私は英語が全くできないのですが、拙い英語でなんとかやりとりをしていました。また、建築用語などは言い回しが特に難しく、文章にしたものをSNSなどで送ってもらい、単語の意味を調べて…を繰り返していました(笑)。
A3. タイも日本も母国語でない言語でのやりとりだったため、細かい部分までは伝わりにくいところもありました。そのため、文字だけでなく図面や模型(モデル)、スケッチなどのツールでわかりやすく、明確にアイデアを伝える必要性を日本人同士で設計を行うとき以上に感じました。
A4. 簡潔に自分のアイデアを相手に伝える大切さを学びました。日本語に比べて英語は細かいニュアンスが伝えにくいものの、自分たちの伝えたいことはより明確に現れると感じました。一番伝えたいことが何であるか考え、相手に伝える前に頭を整理する習慣は今後生かされると思います。
A1. 海外の学生との交流は初めてで不安なこともありましたが、チームメンバー全員で協力してでき上がった作品を評価していただき非常に嬉しいです。今回のプロジェクトを通して学んだことも多く、自分自身も成長できたと思います。
A2. 全て英語でのやりとりであり、英語力に自信はありませんでしたが、適宜、図や表も用いながら意思の疎通を図ることができました。
A3. 日本ではよく見る間取りの様式が世界的には当たり前ではないことを改めて実感し、日本とは異なるタイの住環境も知ることができました。タイの住環境での提案であったため、日本の良いところも伝えつつ、グローバルな視点を持ち、取り組むことができました。
A4. 自分の表現したいことを、いかに相手に伝えるのか、母国語が異なるメンバーでやり取りをしたことで、今までになかった観点を持つことができました。また、タイの学生のプレゼンテーション力の高さに驚き、参考になる部分がとても多かったです。これから自分の表現を相手に伝えていくうえで生かせることを多く学びました。
A1. 今回、優勝できたことを大変嬉しく思います。チームの皆や先生方のご指導のおかげでこのような結果に繋がったと思っております。本当にありがとうございました。
A2. タイのメンバーには感謝しかありません。タイのメンバーと比べて英語が得意ではない私たちも一緒に話し合えるよう、たくさん協力してくれました。皆さん本当に優しくて、このチームで参加できたことを嬉しく思っています。
A3. エスキス(設計課題の報告会?相談会)の進め方やアイデア出しの方法、資料の作り方など、普段行っている大学での設計とは異なるところが多く、苦労もしましたが、新たな発見や気づきの大変多いプロジェクトでした。
A4. タイのメンバーのデザイン、コンセプトの発想や英語でのやり取り、タイの住宅についてなど、日々学びの連続でした。今回学んだことは今後の大学での授業や、社会人になってからも様々な場面で生かしていきたいと思います。
提案いただいた中には、今後の参考にさせていただきたいアイデアが多くありました。
実現に向けての具体的な検討はこれからですが、将来的には実用的な形として、パートナーのディベロッパーへも提案していきたいと考えています。
?篠原聡子教授からのコメント
本学の住居学は、「生活者の視点」から考えるリサーチアンドデザインが肝となっています。
「住む」という枠を越え、「働く」や「共有する」などさまざまな行動がシームレスになった昨今、 新しい住居のあり方を国際的なチーム連携において学び、考え、伝え合い、アウトプットするという経験が、学生たちにとって貴重な経験になったのではないでしょうか。
今後もこのような実践的な活動を学生たちとともにできたらと考えています。